楽園の炎
う~ん、と朱夏は、眉間に指を当てた。
どうして同じ兄弟なのに、こうも違うのだろう。

「アリンダ様はさぁ、ご自分のことは、どうでもいいのかしら。ご自身だって、ご結婚してらっしゃらないんでしょ?」

意外な意見に、勢い込んでいたセドナは、きょとんとする。
傍に控えていたレダたちも、疑問符を顔に浮かべている。

「ご自分にそういうかたができたら、こんな無茶もしないんじゃないかしら」

「夕星様の無茶が治ったように?」

葵の言葉に、朱夏はこくんと頷く。
葵は少し考えて、軽く首を振った。

「よくわからないけど。アリンダ皇子の行動は、夕星様とは根本的に違うと思うよ。本来の性格が、元々粗暴なんだと思う」

大好きだった母親を、己の手にかけてしまったが故の性格の歪みなら、矯正のしようもあると思ったのだが。
そんな生易しいものでもないのかもしれない。

「おそらくあの性格は、メイズ様が作り上げてしまったのでしょう。アリンダ様がお小さい頃から、すでにメイズ様はアリンダ様を見ておられなかったようですし。周りにも、信頼できる者がいなかった、というのも悲劇ですわね」

「まだ優しい乳母とかがいれば良かったのに、そういう人が、いなかったのね」
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