楽園の炎
朱夏も父親である炎駒と打ち解けたのは、つい最近のことである。
母のことは記憶にないぐらいだし、炎駒は忙しかったから、構ってもらうこともなかった。

だが、葵や桂枝がいたし、憂杏もよく遊んでくれた。
だから、寂しくもなかったし、変にいじけることもなかったのだ。

「そう考えれば、お気の毒と言えなくもないですが。そういう育ちだから、全てが許されると思うと大間違いです。なまじ、れっきとした第二皇子である、ということが、今までの我々の枷になっておりました。下手に罰せられない、ということが、ますますアリンダ様を増長させてしまったのです。けれど、おそらく今回は、相応の罰を下されますわよ」

考えると、鬱々としてしまう。
夕星との結婚のためにこの国に来たはずなのに、その前に皇家の者の処断という暗い出来事が横たわっている。

俯いた朱夏を元気づけるように、葵が、ぽんと頭に手を置いた。

「何であれ、今回のことは許されることじゃない。今までのことも含めて、まとめて罰が下るだろう。仕方ないさ。やったことは事実だからね。後は皇帝陛下にお任せして、朱夏はいつも通りに過ごすのが一番だよ。僕も暇を見つけて、近衛隊の訓練に出るようにしよう。うかうかしてたら、もう朱夏の足元にも及ばなくなってしまうからね」

あはは、と明るく笑って、葵は部屋を出ていった。
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