楽園の炎
第三十五章
それから何日か経ったある日の夕刻、朱夏は湯に浸かってぼんやりとしていた。

先日、朱夏とレダを襲った兵士らが処刑された。
襲ったのがレダだけだったら、死罪は免れたかもしれない。
だが、皇子の婚約者である朱夏を襲ったのが命取りになった。

アリンダはいまだ、一室に軟禁されているが、兵士が処刑されたことで、今回のことがいつもより重く取られていることを、初めて思い知ったらしい。
近く、アリンダ皇子の裁可も下るだろう。

「朱夏様、あんまりお湯に浸かってると、ふやけてしまいますわよ」

アルがひょいと顔を覗かせ、長椅子に香油を用意しながら言った。

「うん・・・・・・。何だかちょっと、やっぱり気は晴れないなぁ」

湯から上がり、そのまま長椅子に寝そべりながら、朱夏はぽつりと呟いた。

婚儀の前に、血が流れるようなことになってしまった。
いくら自業自得なこととはいえ、良い気分ではいられない。

アルは朱夏の身体に香油を擦りつけながら、呆れたように言う。

「朱夏様、もっと厳しくならないと。お優しいだけでは、国は治められませんわよ。刃向かう者は、小さな芽でも徹底的に摘み取るぐらいの厳しさも、時には必要です」

ましてや今回は、積もり積もった重臣らの恨みもありますからね、と言うアルに、朱夏は、うん、と頷いた。
が、ふぅ、とため息が漏れてしまう。
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