楽園の炎
「あたし、のほほんとしたアルファルド人だから、基本的に呑気なのよぅ。処刑なんてものも、アルファルドでは滅多になかったじゃない。皆のほほんとしてるし」

「そう考えると、夕星様の処刑は、アルファルドにしては思い切った処罰だったわけですね」

「そうね。でもあれは、ほんとにユウがただの商人で、葵を殺してあたしを攫ってたんだったら、そりゃ処刑だわよ。王太子暗殺よ?」

「そうですね。でも、今回のアリンダ様だって、似たようなものですわよ。朱夏様が本当のたおやかな姫君でしたら、アリンダ様に呆気なく犯されておりましたでしょ。そうすれば、きっとショックで命を絶ってしまいますわ。そうなると、皇子の婚約者を殺したことと、変わりませんもの」

そっかぁ、と朱夏は、組んだ両手の上に顎を乗せて息をついた。
アリンダがまだ処刑にならないのは、やはり『皇子』だからだろう。

「んでもさ~、これでアリンダ皇子が死罪になったら、あたしも後味良くないわよ」

あら、とアルが、手を止めて朱夏を覗き込む。

「あんな目に遭ったら、『殺してやりたい』と思いませんか?」

「まぁねぇ。・・・・・・確かに襲われてるときは、そう思ったけど。こんな時間が経ったら、怒りも収まっちゃって、よくわかんないわ」

「どちらかというと、襲われた朱夏様よりも、夕星様の怒りのほうが、凄まじいようですわね」

言いながら、アルは手早く朱夏の髪をまとめ、夜着を着せた。
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