楽園の炎
「アルファルドの、炎駒様からのお手紙です」

「え、父上から?」

乗り出し、書状を受け取る。

「ククルカンに来る前に、アルファルドに寄ったのです。皆様とは、反対のルートを取ったということですわね。そちらで、炎駒様にお会いしました。竜が夕星様のお名前を出したことで、炎駒様がお手紙を託されたのです」

がさがさと巻かれた油紙を開き、中の紙を広げる。
離れてまだそんなに経っていないのに、懐かしい父の文字に、目頭が熱くなる。

そこには、朱夏の様子を気遣う言葉と、今回の事件についての憤りが綴られていた。

「炎駒様には、わたくしたちにも朱夏姫様へのお祝いについてのお礼をいただきまして、本当に恐縮です。良いお父様ですわね」

「ん、そうね」

朱夏は書状から顔を上げ、ちょっと無理矢理っぽく笑顔を作った。
遠く離れたアルファルドの父の元にまで、すでに今回のことは伝わっている。
どこまで正確に伝わっているのかわからない分、朱夏としては、一刻も早く返事を出したいところだ。

「ねぇ苺鈴さん。苺鈴さんのキャラバンは、アルファルドから来たんだったら、もうしばらくはアルファルドに行かない・・・・・・よね」
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