楽園の炎
「?」

朱夏は布を広げて、まじまじと眺めた。
どこがどうなっているのか、さっぱりわからない。

横にいるアルに、へら、と笑いかけると、心得たもので、アルはとりあえず朱夏に立ち上がるよう促す。
衣装を一旦衣装係に渡し、朱夏の腰帯を取ると、上着を脱がせて下着だけにした。

「これの上からで、いいですかね?」

アルが衣装係長に言うと、彼女は少し考えて、別に持っていた袋を探った。

「当日に何かあってはまずいですから、完全にお式のときの、正装をしてみるべきでしょうか。では下着も、こちらのものをつけていただいたほうがいいですね」

何やら身体に付けるものとも思えないようなものを取り出す。
やはりさっぱりわからない朱夏は棒立ちにさせ、アルや衣装係の侍女たちが、複雑な衣装を着けていく。

「いたたっ! そ、そんなに絞らないでよっ」

「何言ってるんです。ここは括れを強調しないと」

「余分なお肉がありませんから、あまり絞っても変わりませんわね」

衣装係長が、腰のリボンを締めながら言う。
朱夏はあちこち締め付けられて、何か呼吸もままならない。

「さて、これでいよいよドレスです」

衣装係長の声に、朱夏は傍の壁に手をついたまま、胡乱な目を向けた。

「こ、これからがメインってこと?」

「今の格好なんて、まだまだ下着ですわよ。さ、両手を広げて」

すでにへろへろの朱夏に、ようやく初めに見た真っ白い布切れが被せられる。

「えっと、ここをこう結んで、この紐がこっちに。ああ、その帯で腰を縛って」

てきぱきと朱夏の周りを動き回る衣装係たちによって、ようやく全ての衣装が身についた。
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