楽園の炎
「そう・・・・・・ですね。いえ、何でも、というわけではないですよ。刃物であれば良いというか。夕星様は、宝剣の代わりに守り刀を贈りましたでしょ。同じ事です」

「刃物であれば良いのですか? 何だか物騒ですわね」

アルの感想に、セドナは、そうね、と笑う。

「誓いですもの。軽かったらいけないでしょう? 宝剣は短剣ですけど、そう小さいものでもない、これぐらいのものです」

言いながら、人の手の先から肘ぐらいまでの大きさを示す。

「もしも生涯あなたを愛します、という誓いを破ったときは、この剣で胸を刺しても良い、という意味なのですよ」

「・・・・・・物騒といえば物騒ですけど。情熱的な誓いですね」

ほぅ、とアルが頬に手を当てて言う。
そして、意味ありげにちらりと朱夏を見た。

「なるほど。それでしたら、確かに宝剣のほうが、致命傷になりますわね。守り刀では、ちょっとした浅傷しか負わせられないような気がします。でも、夕星様も渡した相手が悪かったですわね~。朱夏様なら、あの小さな守り刀でも、致命傷を負わせますわよ。誓いは胸ですけど、夕星様が浮気したら、朱夏様は首筋を狙うでしょう?」

「そうね。頚脈を断ち切ってやるわ。・・・・・・て、何言わすのよ。そんなこと、しないわよ」

「あらでも。それは双方了承済みなのでしょう? だったら例え皇家の者でも、妻には夫を殺す権利があるってことですわ」

なかなか良い誓いですねぇ、と言うアルに、朱夏は、おや? と疑問が浮かんだ。

確か、皇帝陛下は側室を持っていた。
今は皇后一人だが、かつてはアリンダの母親と、夕星の母親がいたはずだ。
結婚式のたびに誓いを立てていたら、側室など持てないのではないか。
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