楽園の炎
そして、それから七年後。

朱夏は、いつもの樫の木の上で、ぼんやりしていた。
体つきも随分と女性らしくなったが、行動は七年前と、何ら変わらない。
着ているリンズも、昔とほぼ変わらない。
少しだけ、切り込みの位置が下がったぐらいか。

朱夏は木の上から、宮殿の外を眺めた。
この大きな樫の木の上からは、町の様子がよく見える。

目に映る人々は、七年前に比べて、格段に多くなった。
人種も様々。
一目で他の国の人間だとわかる者が、目につくようになった。

---戦がもたらした、異文化かぁ---

ぱらぱらと見える、リンズでない衣服や、見慣れない肌の色の人間を眺めながら、朱夏はぼんやりと思った。

五年前に起こった戦で、大国ククルカンに負けたアルファルド国は、今はククルカンの属国だ。
もっとも戦といっても、大した戦闘があったわけではない。
アルファルドの美しさに魅せられたククルカン王が、できるだけ平和的に、この国を己のものとしたのだ。

『孤独なもの』という意味の通り、砂漠の中にぽつんとあったアルファルド国は、周りの文化もあまり入らず、独自の文化を形成し、それが独特の美しさを持っていたらしい。

一方ククルカンは、民が神と崇めるカリスマ王が軍を率い、急激に領土を広げた国だ。
アルファルドもその手を逃れられなかったわけだが、のどかで美しいこの国を、戦で潰すのは惜しいというククルカン王の変わった人柄と、侵略の危険など無縁に暮らしてきたアルファルドの弱さが幸いし、ほぼ無血のまま、アルファルドはククルカンの属国になったのだ。
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