楽園の炎
第三十六章
「朱夏! 炎駒殿が、コアトルに着いたって」
いつものように近衛隊の面々と剣を合わせていた朱夏の元に、葵が駆け寄ってきた。
「ほんと?」
ぱっと笑顔になって、朱夏が振り向いた。
が、その隙に、相手の兵士に、ひょいと担がれてしまう。
「ああっ! しまったぁ!」
「はっはっは。嬉しいお知らせではありましょうが、まだ気を散らすのはお早いですなぁ」
大柄な兵士の肩の上で、じたばたと暴れる朱夏に、葵が笑い声を上げた。
「あははっ。ごめんごめん。でも朱夏の負けだね~」
ぶぅ、と膨れる朱夏を、すとんと降ろした兵士は、これまた笑いながら言う。
「お軽いですなぁ。もうちょっと太られても良いのでは? こう細いと、少し力を入れただけで折れそうで、心許ないです」
「でもそう思ってると、鼻の骨を折ったり歯を砕いたりされるのですから、恐ろしい」
どっと笑う兵士たちに、朱夏は微妙な顔になる。
朱夏がアリンダを打ちのめしたことは、兵士らに知れ渡っているようだ。
が、やはり誰も朱夏を奇異の目で見ないばかりか、アリンダを労る素振りも見せない。
むしろ朱夏に、一目置くようになった。
大人しくしないと、夕星の評価まで下げてしまうと思っていた朱夏は、周りの評価に若干戸惑い気味だ。
もっとも、近衛隊の練習に参加している時点で、大人しくはしていないのだが。
いつものように近衛隊の面々と剣を合わせていた朱夏の元に、葵が駆け寄ってきた。
「ほんと?」
ぱっと笑顔になって、朱夏が振り向いた。
が、その隙に、相手の兵士に、ひょいと担がれてしまう。
「ああっ! しまったぁ!」
「はっはっは。嬉しいお知らせではありましょうが、まだ気を散らすのはお早いですなぁ」
大柄な兵士の肩の上で、じたばたと暴れる朱夏に、葵が笑い声を上げた。
「あははっ。ごめんごめん。でも朱夏の負けだね~」
ぶぅ、と膨れる朱夏を、すとんと降ろした兵士は、これまた笑いながら言う。
「お軽いですなぁ。もうちょっと太られても良いのでは? こう細いと、少し力を入れただけで折れそうで、心許ないです」
「でもそう思ってると、鼻の骨を折ったり歯を砕いたりされるのですから、恐ろしい」
どっと笑う兵士たちに、朱夏は微妙な顔になる。
朱夏がアリンダを打ちのめしたことは、兵士らに知れ渡っているようだ。
が、やはり誰も朱夏を奇異の目で見ないばかりか、アリンダを労る素振りも見せない。
むしろ朱夏に、一目置くようになった。
大人しくしないと、夕星の評価まで下げてしまうと思っていた朱夏は、周りの評価に若干戸惑い気味だ。
もっとも、近衛隊の練習に参加している時点で、大人しくはしていないのだが。