楽園の炎
「でも、アリンダ皇子は、一応兵の長でしょ? 戦は抜群に上手いって、皇太子様が仰ってたよ。そんな人を欠いて、大丈夫なの?」
「彼の代わりなど、いくらでもおりますよ」
ネイトが無表情に口を挟んだ。
「統率力のある人間は、近衛隊にも多数おります。夕星様直属の近衛隊は、夕星様の下で育っておりますので、元々そういう資質のある者は、上手くその能力を伸ばしておりますし。皇太子殿下とて、軍を動かす力が皆無というわけではありません。ま、確かにアリンダ様の能力が秀でているというのも認めますがね」
「でも、アリンダ皇子直属の兵もいるのでしょう? その者からしたら、いきなり長がいなくなって、次の指揮官にあっさりと従うものですか?」
葵が兵舎を眺めながら言う。
兵士は長との信頼関係も大事なのではないか?
今この場にいるのは近衛隊だけなので、彼らの長は夕星だ。
ここ数日の間だけでも、近衛隊と夕星の信頼関係は、かなりのものだとわかるほどだ。
初めにネイトらが言ったように、近衛隊と夕星は『忠誠』という固い絆で結ばれている。
アリンダ配下の兵士たちにも忠誠があるのなら、易々と他の者に従うわけはない。
ゆるゆるなアルファルドにあっても、それぐらいはわかるのだ。
が、ネイトは、ふん、と鼻で笑った。
「アリンダ様に忠誠を誓うような愚か者は、処刑された五人だけです。あの者らは、アリンダ様に取り入って乱暴を働くだけの者でしたし。己の妹などをアリンダ様に差し出したりしていましたので、家族からも勘当されていたような愚息どもですよ。己の地位を確保するためには、他がどうなろうと構わない、という考えでしたので、隊でも嫌われておりました」
「彼の代わりなど、いくらでもおりますよ」
ネイトが無表情に口を挟んだ。
「統率力のある人間は、近衛隊にも多数おります。夕星様直属の近衛隊は、夕星様の下で育っておりますので、元々そういう資質のある者は、上手くその能力を伸ばしておりますし。皇太子殿下とて、軍を動かす力が皆無というわけではありません。ま、確かにアリンダ様の能力が秀でているというのも認めますがね」
「でも、アリンダ皇子直属の兵もいるのでしょう? その者からしたら、いきなり長がいなくなって、次の指揮官にあっさりと従うものですか?」
葵が兵舎を眺めながら言う。
兵士は長との信頼関係も大事なのではないか?
今この場にいるのは近衛隊だけなので、彼らの長は夕星だ。
ここ数日の間だけでも、近衛隊と夕星の信頼関係は、かなりのものだとわかるほどだ。
初めにネイトらが言ったように、近衛隊と夕星は『忠誠』という固い絆で結ばれている。
アリンダ配下の兵士たちにも忠誠があるのなら、易々と他の者に従うわけはない。
ゆるゆるなアルファルドにあっても、それぐらいはわかるのだ。
が、ネイトは、ふん、と鼻で笑った。
「アリンダ様に忠誠を誓うような愚か者は、処刑された五人だけです。あの者らは、アリンダ様に取り入って乱暴を働くだけの者でしたし。己の妹などをアリンダ様に差し出したりしていましたので、家族からも勘当されていたような愚息どもですよ。己の地位を確保するためには、他がどうなろうと構わない、という考えでしたので、隊でも嫌われておりました」