楽園の炎
「なるほどなぁ。そうか、それが本当なら、朱夏は葵王のこと、好きじゃないんだな。大事ではあるが、愛じゃない」

「そうなの?」

少しの情報から、多くを得ている。
ユウの能力に、朱夏は舌を巻いた。

「多分な。でも、これから葵王と第二皇女が一緒にいるのを見るうちに、変わるかもしれん。言ってもまだ、見合い段階だからな」

「でもさ、断れないでしょ?」

ぽつりと言った朱夏に、ユウは、おや、というように、身体を起こした。

「・・・・・・気にはなってるのか。ま、今まで意識してこなかったところに、いきなり浮上したことのようだからな。でも、今までは葵王のことを好いていても、ある日いきなり、運命の男に会うかもしれないぜ。言ってしまえば、ナスル姫もそうだ。葵王のことなど知らずにきたが、話に聞いているうちに気になってきて、会うことになった」

「詳しいね」

おっと、と口をつぐんだユウだが、朱夏はぼんやりと、星を眺めたままだ。
あたしにも、運命の人なんてものがいるのかなぁなどと、ぼんやり考えている。

「ナスル姫が、葵王との結婚を強く望めば、葵王はよっぽどの想いがないと、断るのは難しいかもな。もし、国の存亡を賭けることになっても葵王が朱夏を望むなら、葵王から断るかもしれないが。王としては、賢くないかもね」
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