楽園の炎
日が落ちる頃になって、葵は皇帝陛下のところへ行き、それと入れ違いに憂杏とナスル姫が兵舎にやってきた。
憂杏の背中には、ニオベ姫がくっついている。

「ニオベ様~、そんなに憂杏にくっついてると、後々美意識がおかしくなってしまいますよ」

朱夏が苦笑いして言うと、ナスル姫が口に手を当てて、ぷぷぷ、と笑った。

「大丈夫よ。だって朱夏みたいなものじゃない。朱夏だって、ずっと憂杏と一緒にいたんでしょ。ちゃんとお兄様と出会えたじゃない」

すでに兵舎では、夕餉の用意に入っている。
最近朱夏は、ずっと近衛隊らと一緒に夕餉を取っているのだ。

兵舎と小宮は近いため、憂杏とナスル姫も、よく顔を出す。
早速兵士の間をくるくると駆け回って、ナスル姫が配膳の手伝いをする。

「朱夏姫様が来てくださるようになって、ナスル姫様も来られるし、一気に兵舎での食事が華やかになりましたなぁ」

「全く。おや、今日はニオベ姫様まで。華が増えて、嬉しい限りです」

賑やかな夕餉を取りながら、朱夏はニオベ姫にも料理を取り分けてやる。
ニオベ姫は憂杏の膝の上で、朱夏に差し出された肉の塊にかぶりついた。
汚れたほっぺたを、憂杏が拭いてやる。

「美味しい。料理人の作るお肉も美味しいけど、兵士の作るお肉も美味しいわね」

膨れたほっぺたをもぐもぐと動かしながら、ニオベ姫が笑う。
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