楽園の炎
「そう言っていただけると、我々も鼻が高いですな」

朱夏の横に座っていたネイトが、満足そうに言った。
城の料理人の料理と比べるなど、料理人が聞いたら泣くだろうな、と思いながら、朱夏が串に刺さった肉を食べていると、ニオベ姫が、じっと朱夏を見つめてきた。

「どうかしました?」

「朱夏お姉ちゃま、あの、葵様って、アルファルドの王子様よね?」

「ええ、そうですよ」

「朱夏お姉ちゃまは、葵様の側近だったのよね?」

「・・・・・・ええ、まぁ」

側近、というほど大層なものでもなかったけど、と思いつつ、朱夏は答えた。
ニオベ姫は、残りの肉をぽいっと口に放り込むと、ずいっと机の向こうから乗り出した。

「王子様だったら、すぐにお国に帰っちゃう?」

「いえ、葵はククルカンに勉強のために来たのですから、そんなすぐには帰らないと思いますよ」

ぱっとニオベ姫の顔が輝いた。

「じゃあ、ずっといてくださるのかしら!」

「いやぁ・・・・・・さすがにずっと、というわけにはいきませんけど。どれぐらいいるつもりなんでしょうね。しっかり外交を勉強したいみたいだし、一年ぐらいはいるのかも」
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