楽園の炎
「駄目ってことはないよ。皇家専属の神殿に、皇家の者が入るんだから、別に悪いことじゃない。ただ神官らがいないだけ」

「いつ行っても、良いところなの?」

おや、というように、夕星が視線を落とす。

「えらい堅いね。そんなこと、朱夏、気にするんだ?」

「そりゃ・・・・・・。だってまだククルカンのそういう儀式的なこと、知らないし。神殿によっては、一定の時期しか入ることができないところもあるっていうし」

「あははっ。そんなことはないよ。まぁ皇家の者以外は、基本的に入れないっていうか、儀式を執り行えないっていうぐらい」

そのうちに、馬は神殿の前に着いた。

「こっち。俺らは基本的に、こっちから入るんだ。裏手になるんだけど」

馬から飛び降り、夕星は朱夏を手招きする。

「ちょっと待ってよ」

慌てて朱夏は、夕星を追い、その手を握った。
神殿の周りには、いろいろな木々がざわめき、闇が一層濃く思える。
このようなところで一人にされてはたまらない。

「大丈夫だって。案外朱夏、恐がりなんだね」

にやにやと笑う夕星に、朱夏は、つん、とそっぽを向く。
だが手は握ったままだ。
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