楽園の炎
「で、ここで止まる。したら、まず祭司が祝福を授けるんだ」

促されて跪き、夕星が、こう、と型どおりに手を組む。

「その後父上が出てきて、同じように祝福を授けた後、立ち上がって・・・・・・」

言いながら、夕星は朱夏を自分のほうに向けた。
真剣な瞳に、どきりとする。

「俺が、誓いの言葉を述べる」

じっと朱夏を見つめる夕星に、練習ということも忘れて、朱夏はどきどきと胸を高鳴らせた。

しばらく見つめ合った後、ふいに夕星が朱夏の胸元に視線を落とした。

「このときにさ、普通なら、宝剣に誓いを立てて、花嫁に渡すんだけど」

そっと、首に掛かる守り刀に手を触れる。

「俺はこれに、誓いを立てる。これは本当に、朱夏を守ってくれたものだしね。常に朱夏の身についているものに誓うほうが、より強いような気もするし」

「あ・・・・・・じゃあこれは、外しやすくしておいたほうが良いのかしら」

夕星の手が素肌に当たっているため、必要以上にどきどきしながら、朱夏はちら、と視線を落とした。

「いや」

一旦言葉を切り、ちょっと黙り込んだので、朱夏は不思議に思って顔を上げた。
目があった途端、夕星は、にやりと笑う。
いかにも何か企んでいるような笑みだ。

「そのままで良いよ。折角それに合う首飾りもあつらえたことだしね。へへっ楽しみだなぁ」

にやにや笑う夕星に、朱夏は少し不安になる。
ただでさえ式典のことで頭がいっぱいなのに、余計な心配事が増えたような気がした。
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