楽園の炎
「大丈夫だって。でもやっぱり、馬のほうが良いな。馬だったら、抱いててやれるし」

言いながら、夕星は朱夏の腰を支えるように、出口に向かう。
その間にも、回廊の両端から、重臣らがお祝いしてくれる。

出口が近づくにつれ、民の姿が見えてきて、その人数の多さに、朱夏はまた圧倒された。
そもそも皇族からしたら出口なのだが、今向かっているのは、本来は神殿の正面なのだ。

回廊を突っ切ると、開けた視界にククルカンの町が一望できる。
夕星と朱夏が神殿の大階段上に姿を現すと、集まった民衆から、地を揺るがすような歓声が上がった。

口々に祝いの言葉を叫んでいるが、何せ凄い人だ。
声に押されて、朱夏はよろめいた。

「こ、この中をパレードするの・・・・・・?」

こんな群衆の中に入ろうものなら、一瞬でもみくちゃにされそうだ。
が、夕星は笑って階段を降り始める。

「パレードってほどでもないけどね。民の祝福を、直接受けに行くんだ。楽しいぜ。皆、いろいろくれるしな」

階段の下にはネイトを始め、近衛隊が集まっている。
夕星はネイトが引いてきた自分の愛馬の手綱を受け取ると、飛び乗ろうとして、ちょっと朱夏を振り返った。

「あ、朱夏、その格好じゃ、いつものようには乗れないな。ネイト、台を持ってきてくれ」

夕星の言葉に自分の身体を見れば、確かに今は、着慣れないドレスだ。
夕星はその間に馬に乗り、朱夏の手を取った。

「さ、どうぞ」

ネイトが用意した台に足をかけ、朱夏は、よいしょ、と夕星の前に乗る。
だが座る前に、夕星に、ひょいと持ち上げられてしまう。

「駄目駄目。今日は横乗り」

朱夏を横向け、夕星は自分の胸にもたれさせた。
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