楽園の炎
「さ、お着替えしましょうね。お身体は、お辛くありませんか?」

「え?」

きょとんとする朱夏に、アルが横から突っ込んだ。

「あら、夕星様は、特に妙な性癖などありませんのでしょ。何日間かぶっ通しで寝所に籠もられるかと思ってましたけど、意外にあっさり出てらしたし、朱夏様も、そうお疲れではないでしょう?」

「・・・・・・えええええ??」

おたおたと赤くなる朱夏に、アルは、うふふ、と意地悪そうに眼を細めた。

「どうでした? 驚きのあまり、夕星様に暴力など、振るわなかったでしょうね」

「ぼ、暴力なんて、振るうわけないでしょっ。びっくりするも何も、何だか・・・・・・何されてるかも、よくわからなかったものっ」

「あら羨ましい。お上手なんですのね、夕星様」

ぷぷぷ、とからかうように笑うアルだが、当の朱夏が何のことやらわかっていない。
早々にからかうのは諦め、アルは朱夏から毛布を取り上げ、着替えを手伝った。

その間、朱夏はどことなく落ち着かない様子で、寝所の中を見回している。

「どうかなさいました?」

セドナが言うと、朱夏はちょっと照れくさそうに、ぽん、と寝台を叩いた。

「あのさ、寝台、一つしかないよね。ずっと・・・・・・?」

「お嫌なんですか?」

意外そうに言うと、朱夏はぶんぶんと首を振る。
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