楽園の炎
「そうじゃないけど。だ、だって、ユウが・・・・・・」

もじもじと言葉を濁す。
今までだって一つの寝台で寝てきたが、あくまで言葉通り『寝た』だけだ。
これからは、毎晩あんなに緊張しないといけないのだろうか。

「・・・・・・もしかして朱夏様、ご自分で思ってたよりも、お辛かったのでは?」

「辛い?」

「朱夏様、ちょっと・・・・・・そういうことに傷があるじゃないですか」

躊躇いがちに言った後、アルは朱夏の耳に、こそっと囁く。

「葵王様でも、怖かったでしょう?」

これは誰も知らないことだ。
セドナにも聞こえないように言い、アルは心配そうに朱夏を覗き込んだ。

「うん・・・・・・。でもね、ほんとにユウだったら、全然違うのよ。あの、怖くはないっていうか・・・・・・ううん、怖くないことはなかったけど。何て言えば良いのかな。嫌悪は、全然ないの」

上手く言い表すことができなくて、朱夏は考えつつ、もどかしそうに言った。

「朱夏様、夕星様のことは、お好きでしょう?」

こくん、と頷く。

「愛してらっしゃる?」

ちら、とアルを見、赤くなりつつも、朱夏は再度、こくんと頷いた。

「じゃあ大丈夫ですよ。夕星様だって、朱夏様を愛しく思うからこそ、あっさりと初夜を終えたのでしょう。今までずっと我慢してらしたのに、寝過ごすこともなく朱夏様を離されたのも、そのためですよ」
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