楽園の炎
「・・・・・・普通は違うの?」

「普通、というか。それこそ何と言えば良いのかわかりませんけど、人によっては自分のものになった嬉しさに、我を忘れて暴走するかたもおられますから」

「・・・・・・」

「わたくしがその昔お仕えしていた貴族の子息は、婚儀の晩から三日三晩、花嫁と寝所に籠もりきりでしたよ」

呆気に取られて、朱夏はアルを見た。
そういえば、初めにちらりとそんなことを言っていたような。

「え、ずーっと二人で? そんな、何するのよ」

再びわたわたと言う朱夏に、アルは、ふふふ、と意味ありげに笑った。

「何って、決まってるじゃないですか。それまでの我慢を、ひたすら消化するのですよ。下世話な言い方をすれば、花嫁の身体を貪る、というのですか」

ひええぇぇっと、思いきり引く朱夏に、アルは、ぐい、と顔を近づけて、ちらっと衣の胸元をはだけた。
昨晩夕星がつけた跡が、淡く残っている。

「夕星様こそ、それこそ誰にも負けないぐらいの強い想いで朱夏様を抱いたのですから、その想いをそのままぶつけられたら、そりゃあ一度や二度では済まないでしょう。朱夏様だって、同じぐらいの気持ちで夕星様を想っているなら、夕星様のお気持ちに応えてあげてくださいな」

「・・・・・・」

ちょん、と胸元に残る跡を指して言うアルに、朱夏は赤くなって、小さく頷いた。
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