楽園の炎
「アリンダ様。皇帝陛下のおなりですぞ」

咎めるように言うアシェンの言葉にも、お前如きが自分に意見するなと言わんばかりに、鼻を鳴らして睨み付ける。

その不遜な態度に皇太子が口を開こうとしたとき、すっと後ろから夕星が進み出た。
足音もなくアリンダに近づいた夕星は、皆が止める間もなくアリンダの前髪を鷲掴みにし、力ずくで起き上がらせる。

「痛っ! あ、兄に向かって、何をするのだ!」

手を離そうともがきながら言うアリンダにも何も言わず、夕星はそのまま、アリンダの前髪を掴んだ拳を床に叩き付けた。
初めに一旦引き起こされていたアリンダの身体は、頭から床に落ちる。

寝台から引き摺り落とされ、いまだ前髪は夕星に掴まれたまま床につけられているため、アリンダは皇帝陛下の前に、土下座する形になった。

「兄だと・・・・・・?」

皆が呆気に取られて静まり返った室内に、やがてぽつりと低い声が響いた。
その場の誰もが、ぞっとするような冷たい声音だ。

アリンダの前に片膝をついた夕星は、ぐい、と乱暴に髪を引っ張り、アリンダの顔を上げさせた。

「俺の兄上は、皇太子殿下一人だ」
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