楽園の炎
「そもそもナスル姫様は、葵王のこと、この国に来られるまで、知らなかったのではないですか? 葵王との結婚は、皇帝陛下の意思では?」
「ちょ、ちょっと朱夏。やだやだ、そんなこと、大声で言わないでよ」
真っ赤になって、わたわたと慌てるナスル姫は、皿から焼き菓子をいくつか掴むと、驚くべき速さと正確さで、朱夏の口に、その焼き菓子を投げ込んだ。
むぐぐ、と朱夏が黙ったところで、ナスル姫も、はぁ、とため息をついた。
「もぅ朱夏。そこまで知ってるの? ・・・・・・まぁ・・・・・・確かにわたくしは、葵王様とのお見合いのために、アルファルドに来たのだけど。でもね、初めに葵王様に会いたいって父上に言ったのは、わたくしなの。葵王様のことは、ずぅっと前・・・・・・アルファルドが、ククルカンの属国になった頃から、父上からよく聞いてたの。それで、だんだんわたくしも、興味を持って。少し前の誕生日に、何が欲しいか父上に聞かれたときに、葵王様にお会いしてみたいって言ったのね。そしたら、父上は驚かれたみたいだけど、すぐに凄くお喜びになって。異様なほど臣下の者も、めでたいと言って浮かれてるから、どうしたのかと思ってたら、何だかお見合いの話が・・・・・・」
「な、なるほど。そうだったんですか。だから、訪問がいきなり決まったのですね」
紙ナフキンで口を拭いつつ、朱夏は納得いったように頷いた。
ナスル姫が何気なく言ったことが、お見合いに発展してしまったということか。
「でも、ナスル姫様は、やはり葵王のことが、お好きなのでしょ?」
瞬間、ナスル姫の手が、また焼き菓子を掴んだので、朱夏は身構えた。
が、姫は掴んだ焼き菓子を投げることなく、小さく割ると、欠片を自分の口に入れた。
「そうね・・・・・・。話に聞いたとおり、お美しい、お優しいかただわ」
そうですか? という言葉を呑み込み、朱夏は首を傾げるに留めた。
優しいは優しいが、このナスル姫が美しいと褒めるほど、葵は美しいだろうか。
「ちょ、ちょっと朱夏。やだやだ、そんなこと、大声で言わないでよ」
真っ赤になって、わたわたと慌てるナスル姫は、皿から焼き菓子をいくつか掴むと、驚くべき速さと正確さで、朱夏の口に、その焼き菓子を投げ込んだ。
むぐぐ、と朱夏が黙ったところで、ナスル姫も、はぁ、とため息をついた。
「もぅ朱夏。そこまで知ってるの? ・・・・・・まぁ・・・・・・確かにわたくしは、葵王様とのお見合いのために、アルファルドに来たのだけど。でもね、初めに葵王様に会いたいって父上に言ったのは、わたくしなの。葵王様のことは、ずぅっと前・・・・・・アルファルドが、ククルカンの属国になった頃から、父上からよく聞いてたの。それで、だんだんわたくしも、興味を持って。少し前の誕生日に、何が欲しいか父上に聞かれたときに、葵王様にお会いしてみたいって言ったのね。そしたら、父上は驚かれたみたいだけど、すぐに凄くお喜びになって。異様なほど臣下の者も、めでたいと言って浮かれてるから、どうしたのかと思ってたら、何だかお見合いの話が・・・・・・」
「な、なるほど。そうだったんですか。だから、訪問がいきなり決まったのですね」
紙ナフキンで口を拭いつつ、朱夏は納得いったように頷いた。
ナスル姫が何気なく言ったことが、お見合いに発展してしまったということか。
「でも、ナスル姫様は、やはり葵王のことが、お好きなのでしょ?」
瞬間、ナスル姫の手が、また焼き菓子を掴んだので、朱夏は身構えた。
が、姫は掴んだ焼き菓子を投げることなく、小さく割ると、欠片を自分の口に入れた。
「そうね・・・・・・。話に聞いたとおり、お美しい、お優しいかただわ」
そうですか? という言葉を呑み込み、朱夏は首を傾げるに留めた。
優しいは優しいが、このナスル姫が美しいと褒めるほど、葵は美しいだろうか。