楽園の炎
終章
それから六日ばかり経った昼下がり、アルファルド一行は港でククルカン皇族の見送りを受けていた。

「本日は皇帝陛下直々のお見送り、至極光栄にございます」

膝を付いて、深々と頭を下げる炎駒の後ろで、桂枝始め侍女たちが平伏している。
アルファルドに帰国する炎駒の見送りに、わざわざククルカン皇帝が港まで出張っているのだ。

「いや何。他ならぬアルファルド宰相の見送りだ。できればこのまま、私も船に乗りたいところだな」

アルファルド好きの皇帝陛下は、にこにこと言いながら船を見上げる。

「気をつけて帰られよ。葵王殿は、こちらで責任を持ってお預かりする故、安心なされよとアルファルド王に伝えてくれ」

「炎駒殿、父上によろしく。気をつけてね」

皇帝陛下の言葉を受けて、少し後ろから葵が声をかけた。
炎駒は再び深く頭を下げ、やがて立ち上がる。

朱夏が、炎駒に駆け寄った。

「父上、気をつけて。無理しないで、身体にも気をつけてね」

涙を浮かべて言う朱夏に、炎駒は微笑みながら頷いた。

「朱夏も、元気で。あまり突飛な行動で、周りを困らせるんじゃないぞ。夕星殿」

朱夏の頭を撫で、炎駒は皇帝陛下の後方で近衛隊を率いている夕星に目を向けた。
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