楽園の炎
城に帰る馬上で、朱夏は夕星に背中を預けながら、ぼんやりとククルカンの景色を眺めた。

遠くに望めるククルカンの城。
前を行く皇帝陛下と皇太子。
己の周りを取り巻く、近衛隊の面々。

そして。

朱夏は、ちら、と後ろを見上げた。
自分を抱くように馬を操る、端正な顔の近衛隊長。

「何?」

見下ろす夕星に、朱夏は、ふふっと笑った。

「考えもしなかったなぁ。こんな、宗主国の宰相と結婚することになるなんて」

「朱夏は、どういう人生を送ると思ってたんだ?」

夕星の言葉に、少し考える。

「そうね・・・・・・。まずアルファルドから出ようなんて、思わなかったと思う。そういえばさ、ナスル様ともユウとも全く会うことなく過ごしてたら、どうなってたんだろう。葵のところにナスル様が来ることもなかったら・・・・・・あたし、誰と結婚してただろう」

何となく、流れ的には、やはり葵になるのだろうか。

「父上も、あたしの相手には葵を一番に考えていたようだし。周りもそう思ってたみたい。葵のことは・・・・・・好きだけど、う~ん、そういう男女の仲としては、見られないな・・・・・・。何でだろう? 嫌なところなんて、ないのに」
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