溺愛彼氏6:4
「さっきは曇りだったのに…」
はぁ、とため息をついた。
曇りならまだ許せる。だけど雨になってしまうと何だか気持ちが乗らないし、髪型だっていつもより決まらない気がする。
「なに?雨駄目なの?」
窓に手をついて紗枝も空を眺めていた。
「だって悠紀くんと会うのに、雨だったらゆっくりできないじゃん…。
それに、手もつなげない…」
傘を持ってたら手は繋げないし、2人の距離だっていつもより遠くなってしまう。私はそう考えるとますます落ち込んだ。
「さっきの野太い声は天気のせい?」
「そうだよ、紗枝。
さっきは曇りでもあんな声出しちゃったのに、雨だったらもう…はぁ…」
紗枝は空を眺めたまま明るい声で私に話しかける。
「結菜、テンション上がるように髪の毛、うんと可愛くしよ!
私に任せてね」
やっとこちらを向いた紗枝。その表情は本当に明るかった。私を元気づけてくれてることが痛いほどわかる。
「ありがとう、紗枝」
「そうと決まれば、今日は急いでお弁当食べなきゃね!
早くお昼にならないかな」
「紗枝、食べたいだけでしょ?」
「ばれた?!」
あはは、なんて紗枝は明るい声で笑うから私も吊られて笑う。
本当に今日は楽しみなことが多い。
紗枝に髪型を変えてもらうこと、悠紀くんに会うこと。
…あぁ楽しみだなっ