溺愛彼氏6:4
「あ、悠紀くーん!
待たせちゃったかな?」
頭の上でお団子を作ってある小柄な女の子。
その子が私の目の前で悠紀くんに声をかけた。
待ってないよ、なんて笑顔を向ける悠紀くん。
うそだ…
悠紀くん、授業終わってから2時間半は経ってるはずなのに。
それは彼の優しさ。
だけど、今の私にはそれがすごく辛くてすごく悔しくて、すごく惨めだった。
悠紀くんはあの女の子と手を繋いでどこかに行ってしまった。…え、あの子とも付き合ってるの?
私はじゃあ…振られたんだね、距離を置くって本当は別れって意味だったんだね。
「北沖…かえろ?」
立ち止まっている私に羽柴はゆっくり声をかけて、私の手首をつかんで誘導した。
羽柴に合わせる顔なんかなくて、どんな表情をすればいいかわからない。
そんな私の顔を背中を丸めて羽柴は覗きこんできた。
「あいつが悠紀?もう行ったから大丈夫だよ」