溺愛彼氏6:4
その日の授業は上の空で。悠紀くんのこととか羽柴のこととかたくさん考えることがあって、授業どころではなかった。
まぁ、授業はいつも聞いてないんだけどね。
「じゃあ、紗枝、またあしたね!」
HRのあと、紗枝に別れをつげて、私はさきに玄関で待っている羽柴のところまで急いだ。
羽柴は靴箱に寄りかかりながら、私が来るのを待っていて、私の姿が見えると笑って手なんか振ってきた。
「北沖遅いぞ。俺を待たせるとはいい御身分になったもんだな」
なんて悪態をついては、私の頭をコツンと叩いた。
「羽柴、今日はどこいくの??」
そんな羽柴の行動を無視して、私は疑問を投げかけた。
「あー。まぁちょっとな!行けば分かるしいいだろ!」
なんだか羽柴は隠し事してるみたいだ。目を合わせようともしないし。
「ふーん。いいけど。」
学校を出て歩いているとき、スッと羽柴が手を出してきた。なんとなく意味は汲み取れたけれども、私はその手に触れることはしなかった。
なんで羽柴は怒らないんだろう。
そんな疑問ばかり羽柴といると浮かんでくる。
他愛もない話ばかりして、羽柴がわたしを連れてきたところは悠紀くんの塾だった。