溺愛彼氏6:4
羽柴は私の肩にこてんと頭を乗せると、なぁ、なんて囁いてきた。
この体勢きつくないのかな?ってそんなバカなことを私は考えていて、羽柴のこの呼びかけに少しビクリとした。
「お願いだから…振られてきてくれよ」
「え?」
「あいつのこともう嫌いになれるくらいに残酷に振られてきてくれ、俺はお前のこと悲しませないし、ずっと一緒にいるから。」
だから…振られてくれ。
呪文のようにこの言葉が頭にスッと入ってきた。
苦しそうにつぶやく羽柴の顔は見えなくて、私は肩に乗っている羽柴の頭をぎゅっと抱きしめた。
「羽柴、傷つけてごめんね。悠紀くんと話をしてくるね、行ってきます。」
羽柴は顔をあげて、私の顔を覗き込んだ。私の頬を数回撫でたあと、目を細めて笑い、そのまま私のおでこにキスをした。
「俺はこれくらいしかできない。お前の気持ちがはっきりするまで、待ってるから。あと、お前は最低じゃないからな?」
なんて笑う羽柴のことを真っ直ぐ見れないのは私の気持ちに迷いがあるからで。
「羽柴、ごめんなさい」
「本当、キスまで見せつけられたんだから北沖を滅茶苦茶にしたいのも事実だけど。なんで嫌いにさせてくんねーの?」
羽柴は下を向いてしまった。その表情はもう見れないけれど、私も辛くなって、羽柴にお礼を言ったその足で悠紀くんの塾へと足を踏み入れた。
…羽柴、ごめんなさい。