溺愛彼氏6:4
「僕から離れないでよ…」
私をまっすぐに見つめる悠紀くんから目を逸らすことはできなかった。
本当に悲しそうに笑う彼。
この顔をさせているのは私だ。
私は悠紀くんのこの顔に弱いな。
「悠紀くん、美那さんとキスしたってことも抱き合ってたこともすごくショックだった」
許したいって思った。
「本当は距離おきたいって言われたことが何よりもショックだった。別れなきゃ駄目なんだって。悲しかったんだよ、すごく」
許したい、だけど。
「だけど、羽柴が…ある男の子が支えてくれた。笑わせてくれた。悠紀くんとキスしてる所を目の前で見せてしまったし裏切ってしまった」
ゆっくりだけど私は自分の言葉を紡ぎ出す。
「もう羽柴を裏切りたくないの。悠紀くん今までありがとう、さようなら」
今度はすんなりベンチから立ち上がれた。悠紀くんは項垂れたまま顔さえあげなかった。
私はそのまま歩き出して、一度だけベンチを振り返った。
目を拭う悠紀くんと目が合って、悠紀くんは少しだけ笑ってくれる。そのまま一礼して私は公園を後にした。
さようなら、悠紀くん。大好きでした。