丁寧な言葉にご注意を。
「詐欺師が……」
「ハハハ。聞こえてますよ。」
呟いたハズだったんだけどなぁ。まぁいっか。
「あたしさーアンタみたいな奴とずぇったい関わりたくないけどずぇっっったい敵に回したくない。この詐欺師め。詐欺師」
「二回言いますか。そしてすでに独り言隠す気0ですか。」
大事な事だから二回言った。
大事な事だから二回言いましたともよ。
ハァ、ため息ついて中臣はコンタクトを外して眼鏡を掛けた。
「中臣さー、コンタクトにしないの?
せっかくの顔なのに。活用してみればいいのに。」
あたしも蒸れるのでカツラを取った。
「活用してるじゃないですか。今、ね」
悪用してる。
「それに、目立つ訳にはいかないんです。」
そう言って、中臣はいつものように口角を上げた。
そのはずなのに、いつもと違うような違和感は、なに?
なんとなく、
それ以上は聞かないでほしいと言ってるような気がして、
「ふーん‥」
あたしもそれ以上は踏み込まなかった。
知らなくても、困りはしない。
だってあたしと中臣は他人なんだから。
クラスメートでも、友達じゃない。
友達でも、恋人じゃない。
じゃあ、
中臣との関係ってなんなんだろう
そう思うと、あいまいな関係なんだなって
それなのに、彼の境界線に立ち入ってみたいなんて、
そんな紙切れみたいな好奇心。
ないほうがいいじゃん。