だってキミが可愛すぎて
「……アカンで?
そないな顔したら」
「え……?」
ぐん、いきなり抱き寄せられた身体は、呆気ないほどあっさりと彼の腕の中に収まった。
強く強く抱き締められて、彼の硬い胸にきつく押し付けられれば、息が出来ないのと胸が苦しいのとで窒息死しそうになる。
いきなりこんなことして、この人は何のつもりだろう。
そう彼の思考を理解しようとするだけ無駄なのかもしれないけれど、またいつもの気まぐれなのだとしたら、今回ばかりは本当にやめて欲しい。
だって、大変なことになってるから。
心臓が、頭の中が、異常事態を起こしてる。
激しい鼓動は爆弾のカウントダウンをしてるみたいで、そのうち心臓が爆発するんじゃないかと思う。
頭の方だって、一見冷静なように感じるけど、中枢能力は完全に失われている。
だって、さっきから頭では「逃げろ」って何度も何度も命令してるのに、身体は全く動いてくれない。
「や……だ」
「聞こえへん」
必死の思いで出した声も、ぐいっと胸に顔を押し付けられてしまえば簡単に消える。