だってキミが可愛すぎて
 
首の辺りに熱い吐息を感じた次の瞬間、チクリ、鋭利な小さい痛みが首筋に走った。


「痛……」


思わず顔をしかめれば、いつの間にか目の前に戻ってきた彼の顔が、満足そうに私の顔を覗き込んでいる。


「なに……?」


本当は聞かなくても分かってた。


キスマーク、だ。


漫画とかドラマとかでよく見る、あの“恋人の印”だ。


その印をなんで私に?


ますます意味が分からない。


それよりも、唇が触れたところが焦げたみたいに熱くて、ジンと痛む。


首から身体中に熱が広がって、溶けてしまいそう。


ドクドクと跳ねる心臓が、これ以上は危険だと悲鳴を上げている。


「……堪忍な」


彼の長い人差し指が、私の首の数秒前に唇で触れた部分をトンと軽く突いた。


「男おるんやったな」


「え……?」


「“コレ”、バレたら大変なことになってまうんやない?」


なにそれ。


自分でやっておいて……。


「バレんようにしっかり隠しとき」


まあ、男なんていないから問題なんて起きないけど、一体なんだろう、このシレッとした態度は。


(いないけど)男いる女の子に、平気でこんなことしちゃうの?


やっぱり最低。


大嫌い。



 

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