だってキミが可愛すぎて
「……イヤや、言うたら?」
上半身だけ起こしてこっちを見つめる彼の視線に、背筋がゾクリとする。
この張り付けたような、胡散臭い笑顔。
昔から彼はこうだった。
いつでも不適な妖しい笑みを浮かべて、感情を全く表に出さない。
私の全てを見透かしているかのような目に見つめられると、心臓が壊れたかのようにバクバクと動き出す。
「へ……部屋に火つけてでも追い出すよッ!
いいから早く出てって!」
「……ヘェ」
目を合わせていられなくなって後ろを向いた。
ギシリ、とベッドがきしむ音がしたから、彼がベッドから立ち上がったと分かった。
ほ、と安堵の溜め息をついて、振り返ったのが間違いだった。
「イヤや」
目の前には綺麗な鎖骨が見えた。
頭2つ分高い場所から降ってきた甘い声に慌てて顔を上げると、妖しい微笑みを浮かべた彼が私を見下ろしていた。