だってキミが可愛すぎて
 
「火、つけるならつけてみィ?」


ニヤリと笑う彼を見て、一瞬収まった心臓がまた騒ぎ出す。


「や……めて……」


「着替えるんやろ?

ええで、着替えて」


後ろは壁。


目の前には彼。


逃げ場を失った私はどうすることも出来ずに、ただ彼を見つめるしかなかった。


「何をボーっと突っ立ってんの?

早く着替えたったらええやん」


「じゃあ着替えるからどいて!」


「なんで?

イヤや」


この男は……。


どういうつもりでこんなことを言っているんだろう?


思わずギリリと唇を噛み締める。


こういうところが嫌いなんだ。


嘘にしてはしっかりとしている口調で、でも本気とは思えないその張り付けたような笑顔で、私の心臓が爆発するような言動をさらりと言い放ってしまう。


嫌いだ、こんな男。


「あァ、もしかして……脱がせて欲しいン?」


口角をキュッと上げて不適に笑った彼を見て、ますます背筋がゾク、と疼く。


逃げろ、逃げろと頭の中で警報が鳴り響く。


本能が、目の前の男は危険だと言っている。


でも……。


「ならボクが脱がしたるわ」


体が動かない。


 

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