だってキミが可愛すぎて
 
信じられない、そう言わんばかりに彼女の濡れた瞳が大きく揺れた。


「う……そ」

「嘘やない」

「じゃあ……」


「あれはなに?」悲しそうに例のピンク色のマグカップを差す震える細い指。


「ん、アレ?」


決まっとるやないの。



「キミんやで」



キョトンと目を丸くして、小さく首を傾げる姿がまた可愛らしゅうて。


「私、の?」

「せや。食器もタオルも、女物は全部キミの」

「意味が……」

「分からへん?」


なら特別に教えたげる。


「キミがいつ来てもええように、全部揃えてん」


ボクのその言葉を聞いた瞬間、ぽろ、とまた彼女の大きな目から涙が零れて。


「部屋も」

「?」

「キミがいつ来てもええように、広いとこ借りたんやで」

「……」

「せやのにキミ、全然来ォへんねやもん」


寂しかったわ。


震える小さな肩をそっと抱き締めれば、彼女の甘い匂いに包まれて息が苦しくなる。


じくじくと胸に広がるこのどうしよもない愛おしさは、一体どないしたらええんねやろ。


「ずっと待ってたんや、キミのこと」




キミなら、特別にボクん中に入れてあげる。




せやから、おいで。





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