だってキミが可愛すぎて
「スズ……くん」
思わず耳を疑った。
今、なんて……?
「スズくん」
今度は確かに聞こえた。
泣きそうな濡れた声が、ボクの名前を読んだ。
アカン……。
「……何年ぶりやろ、キミがボクん名前呼んだの」
腕の中で震える彼女をきつく抱き締めて、柄にもなく“嬉しい”と思うてしもた自分に気付く。
「苦し……離し……」
「離されへん」
もうアカン。
だって気付いてもうたんや。
ボクがどんだけキミんこと欲しい思うてるか。
そのボクを見上げる潤んだ瞳も、その濡れた小さな赤い唇も、全部、欲しくて欲しくてたまらない。
「もっかい、呼んで」
抱き締める力を緩めて、彼女の顔を覗き込んだら、すがるようにボクを見上げる視線があった。
「スズ、くん……好き」
啜り泣くような甘い声。
上気した頬、切羽詰まったその表情にそそられる。
満たされる。