だってキミが可愛すぎて

 
そっと目を開けると、私は彼の腕の中にいた。


「目ェ覚めたん?」


甘くてちょっと掠れた声が耳から入ってくる。


生身の肌と肌が触れ合う感触に、さっきのことは夢じゃなかったんだって改めて思い知る。


「あの……」

「まだ寝とってええよ。まだ5時やし」


カーテンの隙間からうっすら射し込む朝日。


「……そっちは寝ないの?」

「ほんまにキミは悪い子ォやなァ……。

さっきまであないボクん名前呼んでたくせに……もうボクん名前忘れてしもたん?」

「……スズくん……は寝ないの?」

「なんや、思たより素直なんやね」


くくっと満足そうに笑うと、彼は優しく私を抱き寄せる。


「寝られへんねや。キミの寝顔可愛すぎて、夢中になってもーて」


柔らかく抱き締められているだけなのに、どうしようもなく胸が苦しい。


「ば……ばか!嫌いっ!」


逃げるようにシーツに潜って、赤くなった顔を必死に隠す。


「なんやの、また嘘吐いて。まだお仕置き足りないんねやろか」

「嘘じゃない!ほんとに嫌い!」

「はいまた嘘」


私を追いかけて、シーツに潜り込んでくる彼。


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