だってキミが可愛すぎて
「つれへんなァ……」
私のワイシャツのボタンが、綺麗な長い指によって、ぷつりと1つ外される。
「なんや、ちょっと見ないうちにずいぶん大人になってしもたんやねぇ」
また1つ、ボタンが外れる。
「今までやったら、こんなんしたら平手の1つ2つ飛んできたったのになぁ。
おかしいなぁ……」
彼が腰を屈めて、ずい、と私の顔を覗き込む。
「高校で男でもできたん?」
なにそれ。
言いたくないけど、十数年間生きてきて、彼氏というものが存在したことはありません。
だからもちろん、キスはおろか、それ以上なんてとんでもない。
本当は今だって、心臓は壊れんばかりに脈打ってるし、頭の中も真っ白。
感情が顔にでないように、全ての顔の筋肉を突っ張っるのに必死な状態なんだから。
「……おるん?
オトコ」
相変わらずの感情の読み取れない笑顔で、小首を傾げる。
そこでなんで頷いてしまったのか、自分でも分からない。
「どーせいないやろな」って馬鹿にされるのが悔しかったのか……とにかくよく分からない小さな見栄が、私の首を縦に振らせた。