あの頃の夢
『ご来場の皆様、本日はお集まりいただき、
ありがとうございます!』

真っ白なスポットライトと共に現れたのは、
ピエロの格好をした司会者だった。

オモチャの変声期を使った甲高い声が、
講堂の全体にまで響き渡る。

白く塗られた顔に真っ白なライトが反射して、
もはや誰が演じているのかは
判別できない有り様だ。

ただ、
委員長はそれが誰なのか知っているらしく、
ピエロに向かって小さく手を振っていた。

ピエロはこちらを見て
ニヤリと笑みを浮かべると、
スポットライトを連れて
舞台の裾へと消えて行った。

開幕を前に広がる再びの暗がりが、
興奮した気持ちをゆっくりと整えてくれる。

さぁ、劇の始まりだ。

舞台の上に明かりが灯され、
幕が一気に引き上げられた。

目が眩むような強い光の中に、
舞台のセットが現れる。
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