あの頃の夢
ジリジリと焼けるような日差しを放つ青空、
砂の熱さを感じさせる浜辺に、
少し黒ずんだ海の色。

バライロに輝いていたぼくの胸は、
一瞬にして冷たく凍てついた。

胸が苦しい。息ができない。

夢の海に沈められたときの感覚が、
現実の中で蘇る。

ぼくは必死に委員長の手を握ろうと、
助けを求めた。

でも、
隣に座っているはずの委員長の手は、
どこにも見つからない。

舞台から視線も逸らせないまま、
意識は次第に遠退いていく。

一体、何がいけなかったのか。

もしあのとき、
水平線の向こう側を目指す勇気が、
ほんの少しでもぼくの中にあったのなら。
今のぼくはイジメを受けるような人間には、
ならなかったのだろうか。

もしあのとき、
連中からお姉さんを、
救い出せていたのなら。
お姉さんは
死なずに済んだかもしれなかったのか。

もしあのとき、
あんな夢を見なければ。

もしあのとき・・・・・・。

ぼくの意識は
どうすることもできないまま、
深く暗い海の底へと沈んでしまった。

もう、あの頃には帰れない。

もう、ぼくの元には戻れない。

ぼくの世界は、
完全に終わりを遂げてしまった。
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