あの頃の夢
「足の具合、どう?」

カーテンが開かれて、
冷えきったベッドの上に、
真っ赤な秋の夕焼け空が注がれる。

「足首が折れてるらしいんだけど、
手術するかはまだ判らないみたい」

「そうなんだ・・・・・・。
これ、一応クラスの皆から」

委員長は抱えていたブーケを
こちらに渡してくれた。

「うん。ありがと」

委員長とは同じクラスだけれど、
二人きりでこんなに話をしたのは
初めてな気がする。

ただの形式的なお見舞いとはいえ、
委員長の手からブーケを受け取ると、
何だか急に照れくさい気持ちが
込み上げてきた。

「いきなり入院したっていうから、
ビックリしたよ」

「うん。ちょっと帰り道にね、
公園の階段から落ちちゃって」

「・・・・・・」

「そんなに急な階段じゃ
なかったんだけどね」

ぼくは照れ隠しに、
笑いながら応えた。

かわいい女の子を前にして、
パジャマ姿でいる自分が、
妙に気恥ずかしかった。

「ねえ」

「ん?」

「本当は、やられたんでしょ」

胸が一瞬にして凍りつく。
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