あの頃の夢
悪夢
その夜、またあの頃の夢を見た。

なぜだろう。

十年も前に見た夢を、
なぜ今になってまた
体験してしまうのだろうか。

物心がついてから
まだ間もない頃に見た
夢のことなんて、
この十年ですっかりと
忘れ去っていたはずなのに、
どうしてまたぼくを
苦しめるのだろうか。

お姉さんが死んだのは
昨年の秋のことだった。

オバサンが買い物から帰ると、
お姉さんは自分の部屋で
静かに首を吊っていたらしい。

大人たちは皆、
お姉さんのことを色々と
言っていたけれど、
ぼくにとっては優しくて
面倒見の良い、
素敵なお姉さんだった。

お姉さんはいつも
ぼくの味方をしてくれたし、
夢の中でもぼくのことを
守ってくれた。

夢の海で
泳ぎ方を教えてもらったぼくは、
お姉さんから少し離れたところで
バタ足の練習をしていた。

潜ってはすぐに顔を出して、
水に浮いては
また足をついてしまう。

そんなことを繰り返していると、
同い年くらいの
知らない男の子が数人、
ぼくとお姉さん以外には誰もいない砂浜に
足を踏み入れてきた。
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