まどろみの淵にて~執事ヒューマノイドの失われた記憶~


遠くで、電車がレールの継ぎ目を越えていく音がする。


お屋敷から線路までは数キロメートル離れているのだが、喧騒(けんそう)の収まる深夜の時間帯になると、今のように風に乗って聞こえてくることがあるのだ。


次いで、信号待ちのジーゼルトラックが走り始めた音。これは環状八号線から聞こえて来ている。


昼間は車がひっきりなしに往来する幹線道路が、深夜はひととき、静かな眠りに就く。道幅の広い二車線道路を独り占めして駆け抜けるのは、さぞ気持ちの良いことだろう。



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