モテ彼×ブキヨウ彼女


――ガチャン。

あたしは持っていたフォークをお皿の上に落とした。


「……神崎……君?」


カフェの斜め向かいにある、小さな雑貨屋さん。
そこから出てきたのは、確かに神崎君だった。


背が高くて、サラサラした髪の毛。
はっきりとした顔立ち――。


あたしが見間違えるはずもない。


だけど……問題はその隣。
モデルみたいにスラッとした女の人が一緒に歩いている。


行き交う人々の中でもとびきり目立っていて。
時々吹く風に彼女のストレートの黒髪が揺れる。

まさに絵になるような2人……。


「どういう……こと?」


目の前が真っ暗になって、騒々しい話し声も何も聞こえない。


だって神崎君……
今日は急用が入ったって言ってたよね??



「円香……」

心配そうな凪ちゃんの声も耳に入らないくらいの衝撃……。



この瞬間から、あたしは迷い込むことになったんだ。


どこへ行っても出口の光が見えない
‘恋の迷路’に――。








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