モテ彼×ブキヨウ彼女
「あーあ、大二郎…ヤバいんじゃね?」
「あぁ…」
言われなくても分かっている。
なぜなら、緑色の芝生の上から、晴れ渡った青空に向かって蹴られたボールは、
見事に命中した。
サッカーゴールにではなく…
顧問の…ハゲ頭に。
「かーんーざーきーっ!!」
鬼のような形相でこっちを振り返った顧問。
こうなったら、誰も太刀打ち出来ない。
横にいた風太の姿は…
いつの間にかなく…。
「今からグラウンド十周してこーいっ!」
「はい、すいません!」
はぁ…もう、ダメダメじゃん。
円香の前では、いつも冷静を装おってるけど、
本当は、常に自分の欲望と戦っている。
たぶん、一度キスしたら、止まらなくなる。
円香には…早いよなぁ…。
そんな思いを振り切るように、ひたすら走り続けた。
円香が…
いや、正確にはその親友の‘凪ちゃん’が…
その欲望に挑んで来ようとしているとは知らずに―――…。