モテ彼×ブキヨウ彼女
それから超特急で片付けを済ませ、終わった頃には1時半を回っていた。
「嘘……もうこんな時間!?」
もうすぐ神崎君が来てしまう。
あたしは急いでリビングへと向かった。
すると……
「ダメだ!
神崎君はお父さんと囲碁を楽しむんだ!」
「違う!
俺とゲームするんだよっ」
……と、何故か父親と弟が低レベルな争いをしている。
母親は母親で、鼻唄まじりにお茶の準備を進めていた。
しかも、冷蔵庫には駅前の人気店のケーキ。
30分もあれば売り切れてしまうというのに、朝っぱらから争奪戦に勝利してきたらしい。
みんな……気合いが凄い。
神崎君に迷惑かけないといいけど……。
この時のあたしは、そんな風に気楽に考えていた。
だけど実際は違った。
それから時計の針が2時を指して。
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った後すぐ。
最強のオジャマ虫たちを前に、あたしの心には別の感情が溢れていたんだ――…。