モテ彼×ブキヨウ彼女
――2時過ぎ。
「神崎君!それ終わったらこっち頼むなっ!」
「あ……ハイ……」
「こっちも〜♪」
「……はぁ……」
30分ほど前……
しっかりめの水色のシャツに黒のズボンを合わせ、上にジャケットを羽織った姿でやって来た神崎君は、今、あたしの家族による集中攻撃を受けている。
その発端となったのは、母親の一言。
自己紹介や挨拶を済ませ、用意していたケーキと神崎君が持って来てくれたクッキーをみんなで食べていた時のことだった。
「神崎君?
コレ、お願いできるかしら??」
そう言って母親が取り出したモノは、近所のお友達から預かって来たという大量のサイン色紙。
「ちょっ…
お母さん、何言ってるの!?
神崎君、芸能人じゃないんだから」
……と、あたしが慌てて止めたのにも関わらず…。
「いいじゃなーい!
ね?神崎君?」
「はぁ……」
困った顔を浮かべる神崎君に上目遣いで迫り、強引に押し切ってしまったのだ。