モテ彼×ブキヨウ彼女
あたしは、少し離れた場所にひとりで座っている。
視線の先には、相変わらず騒ぎまくる家族の姿と、それに対して優しく丁寧に対応する神崎君の姿があった。
いつの間にやら、神崎君を巻き込んでの撮影大会まで始まっている。
最初は呆れた目で見ていたあたしだったけど、だんだんその様子を見ているのが苦痛になる。
なんか……やだ。
いくら家族と言えども、あたし以外の前でそんなに優しい顔で笑わないで――…。
「ちょっと円香!
そんな所に座ってボーッとしてないで、お茶!
お茶入れ直して!!」
母親のその一言に、あたしはついに限界に達した。
――バンッ!!!
目の前のテーブルに手を付き立ち上がると、あたしは大声で叫んだ。
「ねぇっ!もういいでしょ!?
あたし、神崎君と2人っきりになりたいの!
神崎君、あたしの部屋行こ?」
この時のあたしは、物凄く大胆だったと思う。
気が付いた時には、目を丸くしている神崎君のぐいっと腕を掴み、そのままリビングの外へと連れ出していた。