モテ彼×ブキヨウ彼女
その出来事が起こったのは10月。
通学路のもみじが綺麗に色づき始めた頃だった。
「いや~ん。
やっぱり美味しい!さすが人気店だけあるね」
「……そうだね」
ある日の放課後、あたしは凪ちゃんと一緒に学校から2駅の所にあるカフェに来ていた。
今時珍しいレンガ造りの小さなお店は最近オープンしたばかり。
だけど、ケーキやパフェといったデザートが豊富に揃っていて、女の子たちの間ではちょっとした評判になっていた。
もちろんあたしもその噂を聞いて、いつか来たいとは思っていたんだけど……。
「……はぁ」
あたしは、目の前で5種類ものケーキを頬張る凪ちゃんを見て大きくため息をついた。
自分の分のケーキは半分以上残したまま、テーブルに肘をつき窓の外を眺める。
そこには、数組のカップルが仲良さそうに歩く姿があった。
それを見るとますます憂うつになってくる。
――あたし……
なんで今、凪ちゃんと一緒にここに来てるんだろう……?