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過去(プロローグ)
幼なじみ
『なおくんとくるみちゃんはお似合いよねぇ』
親戚の人達は口々にそう言った。
『あたし達お似合いだって!』
その頃のあたしはその意味がよく分かんなくて、ただ“仲良し”ということが嬉しかった。
直人とは何かと気が合ったし、一緒にいるのも苦じゃなかった。
それどころか、お互い気が楽にいることができた。
お互い秘密なんてなかった。
それくらいの仲。
それなのに何だか距離を置くことになった。
理由は……
――『付き合っちゃう?』
直人がそう言ったこと。
嫌いじゃないけど好きじゃない。
――ちがう、好きだけど、“恋愛感情じゃない”んだ。
『ごめんなさい』じゃないし、『ありがとう』でもないし。
付き合うのは無理だし、でもあたしは、
嫌われてもう仲良くしてもらえないかも知れなくて怖かった。