二世
 
「“アリア”。この名前に覚えは?」

そう問われて首を左右に振る。


「そっか。君は覚えてないんだ…」

真っすぐ向けられていた瞳は哀しげに揺れ、視線は那佳から外れた。

ズキンッと音を立てるように痛んだ胸を、那佳は不思議に思ったがそのことを深く考えなかった。


「アリアは君の前世の名前で、僕と君は遠い昔に出会っていたんだ。」
「え、前世…」

驚きに瞳を大きくさせた那佳は、ただスカルの言葉を繰り返すだけだった。


「昔からずっと会いたくて、捜して…やっと君を見つけた。」
「人違い、とかじゃ…?」
「僕が間違えるわけない。瞳や髪の色は違っていても、姿形はアリアのまま…」

熱の篭った瞳で再度見つめられ、心臓が高鳴った那佳。


「ぜ、前世で、私とスカルさんは…その、夫婦だったとか…?」
「違う。」
「じゃあ、恋人?」

その言葉にもスカルは、首を横に振り否定する。


「じゃあ…」
「僕とアリアの関係を言葉では言い表すことが出来ないんだ。」
「え…?」

「伝えたくても伝わらない、もどかしさがあった。前世の僕は凄く後悔した。だからこそ……ナカ?何か言った?」

ぼそりと呟いた那佳に、スカルは口を閉じた。


「自分勝手って言ったの!」

グッとごぶしに力を込めて、スカルを睨みつけるように見る。


「僕は、僕は、って自分のことばかりで、私や佐和子のこと…っ!!」

「ナカ…」

言葉に詰まり、視線を落とす那佳。
突然向けられた怒りの感情にスカルは言葉をなくし、戸惑った。


「…いつ帰してくれるの?」
「それは……。ごめん、今すぐには無理だよ。一度僕の惑星に戻って、整備をする必要があるんだ。」

言葉にはならない感情が溢れ、その衝動のままに那佳は立ち上がり告げた。


「私、あなたとなんか会いたくなかった。」











 
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